本記事はアフィリエイト広告を含みます。記載の制度内容は2026年9月15日時点で国税庁の公表資料を確認したものです。税制は改正されることがあるため、実際の申告にあたっては最新情報および税理士・所轄税務署の判断をご確認ください。

開業届を出しに行った税務署で、窓口の職員に「青色申告承認申請書はお出しになりますか」と聞かれ、意味が分からないまま「後で考えます」と答えて帰ってきた。それから半年が過ぎ、年末が近づいて調べ始めた——。この流れで検索している方が、実はかなりの数いらっしゃいます。
そして、この「後で考えます」には期限があります。青色申告の承認を受けるには、原則としてその年の3月15日までに申請書を提出しなければなりません。1月16日以降に開業した場合は、業務を開始した日から2か月以内です。この期限を1日でも過ぎると、その年はどれだけ完璧に帳簿をつけても、青色申告特別控除は1円も受けられません。
失われる金額は具体的です。課税所得が330万円を超える方であれば、65万円控除と10万円控除の差55万円に対して、所得税と住民税を合わせておよそ16万5,000円の税負担の差が生まれます。申請書は1枚の紙で、記入は15分です。15分の作業を先延ばしにした結果として、この金額が消えます。
結論を先に書きます。事業所得・不動産所得・山林所得がある方は、迷わず青色申告を選んでください。白色申告のほうが簡単、というのは現在では誤解です。白色申告でも記帳と帳簿の保存は義務であり、作業量の差はクラウド会計ソフトを使えばほとんど埋まります。同じ作業量で、特典だけが違うというのが実態です。
📌 この記事でわかること
- 青色申告と白色申告の違いを、制度の全項目で比較した一覧
- 65万円・55万円・10万円という控除額の違いと、それぞれの要件(国税庁の規定)
- 青色にすると税金がいくら変わるのか、課税所得別の試算
- 青色申告にしかない5つの特典(控除以外にもある)
- 白色申告でも記帳義務があるという事実
- それでも白色を選ぶ合理性があるケース(正直な線引き)
- 申請期限と、今日から始める手順
- 開業したばかりで、青色と白色のどちらを選ぶか決めていない方
- これまで白色申告をしてきて、青色への切り替えを検討している方
- 「青色は難しそう」という理由だけで白色を選んでいる方
- 65万円控除を狙いたいが、要件が分からない方
- 赤字が出そうで、来年以降に繰り越したい方
- 家族に手伝ってもらっていて、給与を経費にしたい方
結論:事業をしているなら青色申告一択
判断に必要な情報は3つだけ
| 確認事項 | 答え | 意味 |
|---|---|---|
| 事業所得・不動産所得・山林所得がありますか? | ある | 青色申告を選べます |
| 白色申告なら記帳しなくてよいですか? | いいえ、白色でも記帳義務があります | 作業量の差は小さい |
| 青色申告承認申請書は出しましたか? | まだ | 期限を確認してください |
かつては「白色申告なら帳簿をつけなくてよい」という時代がありました。しかし現在は違います。個人で事業や不動産貸付け等を行うすべての方に、記帳と帳簿書類の保存義務があります。所得税の申告の必要がない方も含まれます。
つまり、白色申告を選んでも記帳からは逃れられません。それなら、同じ記帳をして最大65万円の控除を受けられる青色申告を選ばない理由がない、というのが結論です。
「青色は複式簿記が必要だから難しい」は現在では正しくない
65万円または55万円の控除を受けるには、正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)による記帳が必要です。この要件は事実です。しかし、これを「自分で仕訳を書けなければならない」という意味に受け取ると、判断を誤ります。
クラウド会計ソフトは、銀行口座やクレジットカードの明細を自動で取り込み、勘定科目を割り当てるだけで複式簿記の帳簿を生成します。freee会計に至っては、画面に借方・貸方すら表示されません。簿記の知識がなくても、複式簿記の要件を満たした帳簿は作れます。
判断すべきなのは「青色か白色か」ではなく、「申請期限までに申請書を出せるかどうか」です。制度の細部を完璧に理解してから決めようとすると、期限を過ぎます。申請書は提出しても義務が増えるわけではなく、その年に青色申告をしないという選択も可能です。迷っているなら、とりあえず出しておくのが合理的です。
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青色申告と白色申告の基本的な違い

青色申告とは何か
青色申告は、一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする人に対して、所得計算などについて有利な取扱いを認める制度です。国税庁のタックスアンサーNo.2070によれば、不動産所得、事業所得、山林所得のいずれかがある方が対象となります。
利用するには、あらかじめ税務署へ「所得税の青色申告承認申請書」を提出して承認を受ける必要があります。承認を受けようとする年の3月15日までが原則の期限で、その年の1月16日以降に新たに業務を開始した場合は、業務開始の日から2か月以内です。
白色申告とは何か
白色申告は、青色申告の承認を受けていない人が行う申告です。特別な申請は不要で、何もしなければ自動的に白色申告になります。
かつては記帳義務の範囲が限られていましたが、現在は事業所得、不動産所得、山林所得を生ずべき業務を行うすべての方に記帳と帳簿等の保存義務があります。つまり「何もしなくてよい申告方法」ではありません。
最大の違いは「特典の有無」
両者を分ける本質は、記帳の手間ではなく税制上の特典が使えるかどうかです。青色申告には、青色申告特別控除のほかにも複数の特典が用意されています。白色申告にはそれらが一切ありません。
この構造を理解すると、判断は単純になります。同程度の記帳をするのであれば、特典がある側を選ぶほうが有利です。
【全項目比較】青色と白色を一覧で並べる
制度の全項目を同じ軸で比較する
| 比較項目 | 青色申告 | 白色申告 |
|---|---|---|
| 事前の申請 | 必要(青色申告承認申請書) | 不要 |
| 申請期限 | 原則3月15日/新規開業は開始から2か月以内 | — |
| 青色申告特別控除 | 最高65万円(要件により55万円・10万円) | なし |
| 記帳義務 | あり(65万・55万控除は複式簿記) | あり(簡易な方法での記帳) |
| 純損失の繰越控除 | 翌年以後3年間 | 原則なし |
| 純損失の繰戻し還付 | 前年分への繰戻しが可能 | なし |
| 家族への給与 | 青色事業専従者給与(届出額の範囲で全額必要経費) | 事業専従者控除(配偶者最高86万円・その他親族最高50万円) |
| 少額減価償却資産の特例 | 利用できる(年300万円まで) | 利用できない |
| 貸倒引当金の繰入 | 一括評価による繰入が可能 | 個別評価に限られる |
| 提出する決算書 | 青色申告決算書(貸借対照表・損益計算書) | 収支内訳書 |
| 帳簿の保存期間 | 原則7年(書類は5年のものもある) | 法定帳簿7年/任意帳簿・書類5年 |
| 税務署の心証 | 記帳水準が高いと評価される | — |
表を見て最初に注目すべき3行
この表で判断に効くのは、次の3行です。
青色にも白色にも記帳義務があります。この1行を見落とすと「白色のほうが楽だから」という誤った判断に至ります。差があるのは記帳の方法(複式簿記か簡易な方法か)であって、記帳するかしないかではありません。
開業初年度や設備投資をした年は赤字になりやすいものです。青色なら翌年以後3年間にわたって赤字を繰り越して所得から差し引けますが、白色では原則としてできません。赤字が出そうな年ほど、青色の価値が上がります。
白色の事業専従者控除は、配偶者で最高86万円、その他の親族で最高50万円という上限があります。青色事業専従者給与なら、届け出た額の範囲内で労務の対価として相当な金額を全額必要経費にできます。配偶者に年200万円を支払う場合、この差は114万円です。
青色申告特別控除65万・55万・10万の要件
国税庁が定める3段階の要件
青色申告特別控除には3つの金額があり、それぞれ要件が異なります。国税庁のタックスアンサーNo.2072に記載された内容を整理します。
| 控除額 | 必要な要件 |
|---|---|
| 65万円 | 下記55万円の要件に加えて、電子帳簿保存を行っているか、e-Taxを使用して確定申告書等を送信すること(いずれか一方) |
| 55万円 | ①不動産所得または事業所得を生ずべき事業を営んでいること ②取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること ③記帳に基づいて作成した貸借対照表・損益計算書等を確定申告書に添付し、その年分の確定申告期限(翌年3月15日)までに申告書を提出すること |
| 10万円 | 上記55万円・65万円の要件に該当しない青色申告者 |
出典:国税庁 タックスアンサー No.2072「青色申告特別控除」(2026年9月15日確認)
55万円控除の要件③には「その年分の確定申告期限(翌年3月15日)までに申告書を提出すること」が明記されています。1日でも遅れれば、どれだけ完璧な複式簿記の帳簿があっても控除額は10万円に下がります。帳簿づけそのものより、この期限管理のほうが実務上は重要です。3月15日ではなく、2月中の提出を目標にしてください。
65万円と55万円の差は「e-Taxを使うかどうか」だけ
55万円の要件を満たしている人が65万円にするために必要なのは、e-Taxによる電子申告か電子帳簿保存のどちらか一方です。多くの個人事業主にとって、現実的な選択はe-Taxでの電子申告です。
この10万円の差を金額に直すと、課税所得330万円超695万円以下の方(所得税率20%・住民税率10%)であれば約3万円になります。紙で提出するかe-Taxで送信するかという操作の違いだけで、3万円が変わります。e-Taxの具体的な手順はe-Taxを使った青色申告のやり方の記事で解説しています。
控除額は所得金額が上限になる
もう1つ押さえておきたいのが、国税庁の記載にある「各控除額は実際の所得金額がそれより少ない場合、その金額が上限となる」という点です。つまり、所得が30万円しかない年に65万円の控除は使えません。控除できるのは30万円までです。
この仕組みから、所得がまだ小さい開業初年度では、65万円控除のフルの恩恵は受けられないことが分かります。ただし、その年に赤字であれば純損失の繰越しという別の特典が効いてくるため、いずれにせよ青色を選ぶ価値は残ります。
【独自試算】青色にすると税金はいくら変わるか
課税所得別に、65万円控除の効果を金額で見る
「65万円の控除」と言われても、実際にいくら税金が減るのかは分かりにくいものです。そこで、65万円控除と10万円控除の差である55万円に対して、所得税と住民税を合わせた負担がどれだけ変わるかを計算しました。
| 課税される所得金額 | 所得税率 | 住民税率 | 合計 | 55万円分の税負担の差 |
|---|---|---|---|---|
| 195万円以下 | 5% | 10% | 15% | 約82,500円 |
| 195万円超330万円以下 | 10% | 10% | 20% | 約110,000円 |
| 330万円超695万円以下 | 20% | 10% | 30% | 約165,000円 |
| 695万円超900万円以下 | 23% | 10% | 33% | 約181,500円 |
| 900万円超1,800万円以下 | 33% | 10% | 43% | 約236,500円 |
※当サイトによる簡易試算です。所得税の速算表と住民税所得割の標準税率10%を用い、復興特別所得税は含めていません。実際の税額は所得控除の内容や住民税の均等割・自治体ごとの取扱いによって変わります。正確な試算は税理士または税務署にご確認ください。
会計ソフトの費用と比べる
この試算をクラウド会計ソフトの年間費用と並べると、判断はさらに明確になります。2026年9月15日時点で各社公式サイトに記載された最安プランの年額は、freee会計スターターが11,760円(税抜・年払い)、やよいの青色申告 オンライン セルフプランが初年度無料・次年度以降11,800円(税抜)、マネーフォワード クラウド確定申告 パーソナルミニが10,800円(税抜・年払い)です。
| 課税所得 | 65万円控除による税負担の軽減(10万円控除比) | 会計ソフト年額(目安) | 差引 |
|---|---|---|---|
| 195万円以下 | 約82,500円 | 約11,000円 | 約71,500円のプラス |
| 330万円 | 約110,000円 | 約11,000円 | 約99,000円のプラス |
| 500万円 | 約165,000円 | 約11,000円 | 約154,000円のプラス |
| 800万円 | 約181,500円 | 約11,000円 | 約170,500円のプラス |
青色申告特別控除は総所得金額を減らすため、所得を基準に算定される国民健康保険料にも影響します。自治体によって算定方法は異なりますが、所得割の部分が下がる可能性があります。税金だけでなく社会保険料まで含めると、実際の効果は上の試算より大きくなることがあります。正確な金額はお住まいの自治体にご確認ください。
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控除以外にもある、青色申告5つの特典
特典1:純損失の繰越控除(翌年以後3年間)
事業が赤字になった年、その損失(純損失)を翌年以後3年間にわたって繰り越し、各年の所得から差し引けます。白色申告には原則としてこの制度がありません。
たとえば1年目に200万円の赤字、2年目に300万円の黒字が出た場合、青色なら2年目の所得を100万円に圧縮できます。開業初年度に設備投資をして赤字になるケースでは、この特典だけで数十万円の差が出ます。
特典2:純損失の繰戻し還付
前年も青色申告をしていた場合、その年の純損失を前年分の所得に繰り戻して、前年に納めた所得税の還付を請求できます。繰り越して将来の税金を減らすのではなく、すでに払った税金を取り戻す仕組みです。資金繰りが厳しいタイミングでは、繰越しよりこちらのほうが効きます。
特典3:青色事業専従者給与
生計を一にする親族に支払う給与を、必要経費に算入できる制度です。国税庁のタックスアンサーNo.2075によれば、主な要件は次のとおりです。生計を一にする15歳以上の親族であること、その年を通じて6か月を超える期間、専らその事業に従事していること、届出書を提出していること、届け出た金額の範囲内で支払われ、かつ労務の対価として相当と認められる金額であること。
届出の期限は、青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日です(新規開業の場合は開始から2か月以内)。
一方、白色申告の事業専従者控除は、配偶者で最高86万円、15歳以上のその他の親族で最高50万円という上限があります。さらに、この控除をする前の事業所得等の金額を事業専従者の数に1を足した数で割った金額と比べて、低いほうが控除額となります。
| ケース | 青色申告 | 白色申告 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 配偶者に年120万円を支払う | 120万円を必要経費に算入 | 最高86万円 | 34万円 |
| 配偶者に年200万円を支払う | 200万円を必要経費に算入 | 最高86万円 | 114万円 |
| 子(18歳)に年100万円を支払う | 100万円を必要経費に算入 | 最高50万円 | 50万円 |
※青色の場合も、労務の対価として相当と認められる金額であることが要件です。実際に働いていない家族への支払いは認められません。
特典4:少額減価償却資産の特例
通常、10万円以上の資産は減価償却によって複数年にわたって費用化します。しかし一定の要件を満たす青色申告者には、取得した資産を取得した年に一括で必要経費にできる特例があります。
国税庁のタックスアンサーNo.2100(令和8年4月1日現在法令等)によれば、この特例は平成18年4月1日から令和11年3月31日までに取得した資産が対象で、取得価額10万円以上40万円未満(令和8年3月31日までに取得した場合は10万円以上30万円未満)の減価償却資産について、取得価額の合計額のうち300万円に達するまでを、その業務の用に供した年分の必要経費に算入できるとされています。
多くの解説記事では「30万円未満」と説明されていますが、国税庁の最新の記載では、令和8年4月1日以後に取得した資産については40万円未満が基準になっています(令和8年3月31日までの取得分は30万円未満)。30万円台のパソコンや機材の購入を検討している方には、取得時期が金額に直結します。なお、令和4年4月1日以後に取得した資産で貸付けの用に供したもの(主要な業務として行う貸付けを除く)は、この特例の対象外とされています。
| 取得価額 | 原則の取扱い | 青色申告者の選択肢 |
|---|---|---|
| 10万円未満 | 全額をその年の必要経費 | 同じ(青色・白色を問わない) |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年間で均等に費用化 | 少額減価償却資産の特例で一括計上も可能 |
| 20万円以上40万円未満 | 法定耐用年数に応じて減価償却 | 少額減価償却資産の特例で一括計上も可能 |
| 40万円以上 | 法定耐用年数に応じて減価償却 | 同じ |
特典5:貸倒引当金の繰入
売掛金や受取手形などの債権について、回収不能に備えてあらかじめ費用を計上できる制度です。青色申告者は一括評価による繰入が認められており、白色申告者は個別評価に限られます。
売掛金の残高が大きい事業では、この差が節税額として効いてきます。逆に、現金商売や前払いが中心の事業ではほとんど関係しません。
白色申告でも記帳義務はある
「白色なら帳簿はいらない」は過去の話
この記事で最も訂正しておきたい誤解がここです。現在、個人で事業や不動産貸付け等を行うすべての方に、記帳と帳簿書類の保存義務があります。所得税および復興特別所得税の申告の必要がない方も含まれます。
白色申告者が備え付けるべき帳簿は、収入金額や必要経費を記載すべき帳簿(法定帳簿)です。青色申告の複式簿記ほど厳密ではなく、簡易な方法での記載が認められていますが、「つけなくてよい」わけではありません。
帳簿の不備には加算税の加重措置がある
さらに重要な変更があります。令和5年分の確定申告に対する修正申告等から、売上げに関する帳簿を保存していなかったことや、帳簿の売上げについて記載が不十分であったことなどが税務調査において把握された場合には、加算税が加重されることとなりました。
つまり、記帳を怠ることのリスクは以前より大きくなっています。「白色だから適当でいい」という運用は、現在の制度下では成立しません。
白色申告でも帳簿をつけ、収支内訳書を作成して提出する必要があります。青色申告では同じ作業をして、貸借対照表を含む青色申告決算書を提出します。クラウド会計ソフトを使えば、貸借対照表は自動生成されるため、追加の作業はほぼ発生しません。作業量の差を理由に白色を選ぶのは、現在では合理性がありません。
帳簿・書類の保存期間の違い
保存期間は種類によって異なる
帳簿や書類には保存義務があり、その期間は青色・白色および書類の種類によって異なります。
| 区分 | 書類の種類 | 保存期間 |
|---|---|---|
| 青色申告 | 帳簿および主要な書類(仕訳帳・総勘定元帳・決算関係書類など) | 原則7年 |
| 青色申告 | 請求書・見積書など上記以外の書類 | 5年 |
| 白色申告 | 収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿) | 7年 |
| 白色申告 | 任意帳簿および書類 | 5年 |
出典:国税庁 タックスアンサー No.2070「青色申告制度」、No.2080「白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」(2026年9月15日確認)
注目すべきは、白色申告でも法定帳簿は7年保存が必要という点です。「白色は5年でよい」と単純に理解していると、7年保存が必要な帳簿を早く処分してしまう恐れがあります。
電子で受け取った書類は電子のまま保存する
クラウドサービスの利用料や、ネットで購入した備品の領収書をメールやWeb画面で受け取った場合、これらは電子帳簿保存法上の「電子取引」にあたり、原則として電子データのまま保存する必要があります。印刷して紙で保存するだけの運用は、原則として認められません。
要件としては、真実性の確保(訂正削除防止に関する事務処理規程の整備と運用など)、可視性の確保、検索機能の確保があります。ファイル名を「日付_金額_取引先」の形式で統一すれば、検索要件はフォルダ検索で満たせます。なお、相当の理由がある場合の猶予措置も設けられているため、詳細は国税庁の最新の案内をご確認ください。
青色申告のデメリットと注意点
正直に言えば、デメリットは存在します
メリットだけを並べるのは誠実ではないので、青色申告を選んだ場合に実際に発生する負担を挙げます。
青色申告承認申請書の提出期限は、原則としてその年の3月15日、新規開業なら開始から2か月以内です。この期限を過ぎると、その年は青色申告ができません。翌年分からの適用になるため、1年分の控除が完全に失われます。白色申告には申請自体が不要なので、この失敗は起こりません。
正規の簿記の原則による記帳が求められます。会計ソフトを使えば知識がなくても要件は満たせますが、手書きやExcelで済ませようとすると難易度が上がります。実質的に、会計ソフトの導入が前提になります。
55万円・65万円控除には、貸借対照表と損益計算書を確定申告書に添付する必要があります。損益計算書だけでよい白色の収支内訳書に比べ、期首・期末の残高を正しく管理する必要が生まれます。ここも会計ソフトが自動化しますが、預金残高が帳簿と合わないといったトラブルが起きたときには、原因究明の手間が発生します。
3月15日を過ぎて提出すると、55万円・65万円の要件を満たさなくなり、控除は10万円になります。1年間きちんと記帳していても、提出が1日遅れるだけで数十万円の差が生まれます。
最安プランでも年間1万円前後の固定費が発生します。所得が小さく、控除の効果が費用を下回る規模では、この費用が純粋な負担になります。
それでも白色を選ぶ合理性があるケース
万人に青色を勧めるのは誠実ではない
ここまで青色申告を推してきましたが、白色のほうが合理的なケースも存在します。売り込みたい一心で「全員が青色にすべき」と書く記事を信用しないでください。
- 事業所得が年間数十万円程度で、控除額が所得金額の上限に達してしまう方
- すでに申請期限を過ぎており、その年は白色しか選べない方(翌年分の申請は今すぐ出す)
- 事業をその年で終える予定で、来年以降の繰越しや継続的な記帳が不要な方
- 給与所得が主で、副業の所得が雑所得に該当する方(そもそも青色申告の対象外)
- 不動産所得があるが、事業的規模に至っていない方(控除額に制限がある場合がある)
特に4つ目は重要です。青色申告の対象は不動産所得・事業所得・山林所得に限られます。会社員の副業で得た収入が雑所得に該当する場合、そもそも青色申告を選択できません。この場合、青色か白色かを悩むこと自体が的外れです。
今年分の青色申告承認申請の期限を過ぎてしまった場合でも、翌年分の申請は翌年3月15日までに提出すれば有効です。「今年は間に合わなかった」で終わらせず、今すぐ申請書を提出しておいてください。そして今年分は白色として正しく記帳し、その帳簿をそのまま翌年の青色申告に活かせば、実質的な損失は1年分の控除だけに抑えられます。
青色申告を始める手順
「所得税の青色申告承認申請書」を所轄の税務署に提出します。国税庁のサイトから様式をダウンロードでき、e-Taxでの提出も可能です。原則としてその年の3月15日まで、1月16日以降に開業した場合は開業日から2か月以内が期限です。開業届と同時に出すのが最も確実です。
青色事業専従者給与を必要経費にするには、別途「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出が必要です。期限は必要経費に算入しようとする年の3月15日(新規開業は開始から2か月以内)です。青色申告承認申請書とセットで出しておくと漏れがありません。
複式簿記の記帳を自動化するうえで、この準備が効果を最も左右します。私用と混在した口座を会計ソフトに連携すると、毎月の仕分け作業が発生し続けます。詳しくはフリーランスの経費とクレジットカードの記事で解説しています。
65万円控除に必要な複式簿記の帳簿は、クラウド会計ソフトが自動生成します。freeeは無料登録、弥生は初年度無料キャンペーン、マネーフォワードは1か月の無料トライアルが用意されています。実際の明細を入れて2週間使い、手が止まらないほうを選んでください。
月末の最終営業日など、時間を固定してしまうのが最も続きます。1年分をまとめて処理すると、記憶が失われていて領収書の内容を思い出せず、かえって時間がかかります。帳簿の付け方の基本は個人事業主の帳簿の付け方の記事で扱っています。
減価償却費の計上、家事按分の設定、棚卸、売掛金・買掛金の整理などを行います。少額減価償却資産の特例を使う場合は、対象資産の取得価額と取得時期を確認してください。
65万円控除には、e-Taxによる電子申告または電子帳簿保存のいずれかが必要です。そして期限内申告が絶対条件です。目標は3月15日ではなく、2月中の提出にしてください。詳細な流れはe-Taxを使った青色申告のやり方をご覧ください。
会計ソフトの選び方と料金比較
主要3社の個人事業主向け最安プラン
複式簿記の帳簿を自分で作るのは現実的ではないため、青色申告を選ぶ時点で会計ソフトの導入はほぼ前提になります。以下は2026年9月15日時点で各社公式サイトに記載された金額です(すべて税抜)。
| 会計ソフト | 最安プラン | 年額 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| やよいの青色申告 オンライン | セルフプラン | 初年度0円/次年度11,800円 | 3プランとも機能は同一でサポート内容のみ異なる。消費税申告も全プラン対応 |
| freee会計 | スターター | 11,760円(年払い) | 質問に答える形式で申告書を作成。簿記の知識が不要な設計。消費税申告はスタンダード以上 |
| マネーフォワード クラウド確定申告 | パーソナルミニ | 10,800円(年払い) | 1か月の無料トライアルあり(クレジットカード登録不要) |
サポートを重視する場合の選択肢
「この支出はどの勘定科目にすればいいか」という会計の判断そのものを相談したい場合、やよいの青色申告 オンラインのトータルプラン(初年度19,800円・次年度以降39,600円/税抜)には、操作サポートに加えて仕訳相談・経理業務相談・確定申告相談が含まれています。ベーシックプラン(初年度無料・次年度以降22,800円/税抜)は電話・メール・チャットによる操作サポートまでが範囲です。
freee会計では、プレミアムプラン(年39,800円/税抜)以上で電話サポート、乗換代行、税務調査サポート(30時間分)が利用でき、入力おまかせプラン(年49,800円/税抜)では入力・仕訳作業そのものを代行してもらえます。
各社の詳しい比較はfreeeと弥生の比較記事および3社比較記事で扱っています。
▼ 銀行・カード連携で複式簿記を自動化する
マネーフォワード クラウドの料金プランを公式で確認するよくある質問(FAQ)
まとめ:今日やるべきことは1つ
この記事の結論
- 事業所得・不動産所得・山林所得がある方は、原則として青色申告を選ぶべき
- 白色申告でも記帳と帳簿の保存は義務。作業量の差は小さい
- 青色申告承認申請書の期限は原則3月15日/新規開業は開始から2か月以内
- 65万円控除には、複式簿記・貸借対照表の添付・期限内申告に加えてe-Taxまたは電子帳簿保存が必要
- 65万円控除と10万円控除の差は、課税所得500万円なら約16万5,000円(当サイト試算)
- 青色には控除以外に4つの特典がある(純損失の繰越し・繰戻し、専従者給与、少額減価償却資産の特例、貸倒引当金)
- 少額減価償却資産の特例は、令和8年4月1日以後の取得分から基準が40万円未満に
- 副業の所得が雑所得に該当する場合は、そもそも青色申告の対象外
今日やることは1つです。国税庁のサイトから「所得税の青色申告承認申請書」をダウンロードして、記入してください。所要時間は15分です。提出はe-Taxでも、税務署への持参や郵送でも構いません。
この申請書を出したからといって、記帳の義務が新たに増えるわけではありません。白色申告でも記帳は必要だからです。出しておけば選択肢が増え、出さなければ選択肢が消える。それだけの差で、課税所得500万円の方なら年間約16万5,000円が変わります。
申請書を出したら、次は帳簿を作る道具を決めてください。初年度のコストをかけずに始めたい方は弥生、簿記の知識がなく質問形式で進めたい方はfreeeから試すのが、後戻りの少ない順序です。
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※本記事の制度に関する記述は、2026年9月15日時点で国税庁の公表資料(タックスアンサー No.2070「青色申告制度」、No.2072「青色申告特別控除」、No.2075「青色事業専従者給与と事業専従者控除」、No.2080「白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」、No.2100「減価償却のあらまし」等)を確認した内容に基づいています。会計ソフトの料金は各社公式サイトの掲載内容です。税負担の試算は所得税の速算表と住民税所得割の標準税率10%を用いた当サイトによる簡易計算であり、復興特別所得税は含めていません。実際の税額は所得控除の内容等により変わります。税制は改正されることがあります。本記事は税務上の個別具体的な助言を行うものではありません。実際の申告にあたっては、税理士または所轄の税務署にご相談ください。




